相模の小太郎 第10話 屈辱 【シーゲルの歴史小説】
相模の小太郎 -蒼き疾風外伝- 第10話 屈辱 【シーゲルの歴史小説】
※この物語はフィクションです。
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「今日は…ずいぶんと…仕事終わりが…早いじゃないか?(ヤな笑)」((唐島甲四郎)唐島家の跡取り息子)
「か…唐島…甲四郎…(驚&嫌)」(小太郎)
「おい!小太郎~今日の漁の収穫はどうした?」((坂田馬之助)「唐島家」の御用商人「坂田屋」の息子)
「もう…仕分けして…はまやに納品するため…運んで行ったよ…(嫌)」(小太郎)
「何っ?じゃ~オレ様たちの分は…??(怒)」(唐島甲四郎)
「そんなの用意しあるわけないだろう?(怒)」(小太郎)
「おい!小太郎~(怒)
今夜は…「いつ姫」をお祝いする大切な夜だっていうのに…
甲四郎様に差し出す物が…何も無いって言うのか~?(怒)」(坂田馬之助)
「あるわけ無いだろ~!(怒)」(小太郎)
そう言ってから「小太郎」は…
いつもより多い…「唐島甲四郎」の連れの中に…
今日は「唐島甲四郎」の愛人…
「いつ姫」と、いつ姫の「5人組の護衛」を連れて来ているに気付いた…
「いつ姫」と呼ばれているが…正しくは「姫」では無い…
やくざまがいの遊郭で働いた「遊女」で…
つい最近、親と坂田屋に頼み込んで…大金を払って…身請けしたばかりなのだ…
幼い頃に親に売られて…「遊女」となったためだろうか?
美しい顔立ちで…視線は冷たく…ぞくっとするような不思議な魅力の女性だが…
その性格はすさんでいて…暴力的で残酷な一面があった…
そんな「いつ姫」を慕い…影のように付き添っている…
5人組のやくざな男たちも…
幼い頃よりずっと…同じ遊郭で「いつ姫」を護衛してきた者たちで…
「いつ姫」と共に金で身請けされてきた者で…
皆、親の顔も知らない孤児たちであった…
そして彼らは…いづれも顔に刀傷を持ち…
「人を切る」ことにも慣れた…ケンカ屋の用心棒たちであった…
「小太郎」は…
「いつ姫」とその「5人組」がいるを見て…ぞっとした…
「ふふふ…小太郎…オマエは…本当にバカなヤツだな…(苦笑)
いつになったら…痛めつけられる前に…大人しく差し出すようになるんだ?(怒)」(唐島甲四郎)
「そーだよ~今日は「いつ姫」たちもいるんだ…
大人しく言う事聞かないと…殺されちゃうよ~(イヤな笑)」(坂田馬之助)
「……(怯える)」(小太郎たち)
「ちょっと待て…お前ら…いったい何の話をしているのだ?(怒)」(新九郎(北条氏康))
「なんだ?オマエは?…誰だ?」(唐島甲四郎)
「誰だっていいだろう~(怒)」(孫九郎)
「このヤロウ~(怒)」(坂田馬之助)
「お前…大人二人だからって…オレらをなめんなよ…(怒)」(唐島甲四郎)
「そうだ!このお方は…松田様の側近中の側近で…
ここ浜中地区から南浜地区までの水軍を仕切る…
「唐島家」の若様…甲四郎様であるぞ~(叫)」(坂田馬之助)
「え?松田家の…唐島…??(驚)」(新九郎と孫九郎)
小田原・北条家にとって…
「松田家」は…重要な存在だ…
北条家よりも広大な所領を持っている…
北条家は…この松田家と同盟を組んだことにより…
小田原を攻め取り、相模の国を平定することが出来たのだ…
松田家は…表向きは「北条家の家臣」であるが…
その実は…「北条家の同盟者」で…協力者で提供者、
そして「北条家一の実力者」なのである…
所領の上でも…
北条一族全体では…松田家よりも所領が大きくても…
北条氏康だけの所領で比べてみれば…松田家の所領の方が圧倒的に大きいのである…
つまり…北条氏康が北条家の当主でも…
松田家の了承が無ければ…肝心なことは決められないほどの実力者であり…
「小田原の評定(会議や軍議)」が長引くのは…
こう言った「同盟者や協力者」を説得しなければならないからなのだ…。
「兄じゃ…どうする…?(焦る)」(孫九郎)
「う~ん…やっかいじゃ…(困)」(新九郎)
「キヒヒ…唐島様の名を聞いて…ぐうの音も出なくなったか…(イヤな笑)」(坂田馬之助)
「……(焦る&困る)」(新九郎と孫九郎)
すると…今まで黙って大人しくしていた…
「おゆり」(はまやの奉公人の娘)が…
威勢の良い…漁師町の町娘らしく…
「あんたら黙って聞いてれば~調子に乗りやがって~
親が偉いからって…あんたまで偉いわけじゃないんだからね~(怒)」(おゆり)
「そうだ~そうだ~(叫)」(小太郎の弟妹(孤児)たち)
すると今度は…今まで一言もクチをきかなかった…「いつ姫」が…
冷たく…鋭い目線を投げつけながら…前に出てくると…
「おゆり」の顔をおもいっきり引っ叩いた…
「おゆり」がその場に倒れこむと…
今度は、おゆりの顔をおもいっきり蹴り上げた…
「あっ!!(驚)」(小太郎たち)
一瞬のことであった…
そして…「いつ姫」は…小さな子供たちの「小太郎の弟妹(孤児)たち」を…
次々におもいっきり叩いてまわった…小さな子供相手にひどい仕打ちだ…
「あなた~おやめなさい~!」(加賀屋の娘:静江)
たまらず…「加賀屋」の「静江」お嬢様が…
子供を叩く、「いつ姫」の手をつかむと…
「いつ姫」は反対の手で…「静江」の顔を叩き…張り飛ばした…
「あああ”~(怒)」(小太郎)
静江が叩かれて怒った小太郎は…
いつ姫に向かって飛び掛り…いつ姫に体当たりして吹っ飛ばした…
吹っ飛ばされた「いつ姫」は…
かっとなってすぐに飛び起きて…
「おまえら、なにやってんだよ~(怒)
黙って見てないで~やっちまいな~(冷たく)」(いつ姫)
「お…おう~!」(唐島甲四郎たち)
唐島甲四郎たちは…小太郎たちめがけていっせいに殴りかかってきた…
「いつ姫」護衛の「5人組」は…
2人と3人に別れて…「新九郎」と「孫九郎」に飛び交って来た…
さすがの…「新九郎」と「孫九郎」は…
刀や槍など武器も持たず…素手で応戦したが…
今まで経験したことが無いような…集団ケンカ殺法に…あっけにとられ…
ついには…慣れない砂浜に足を取られて…よろめいたところを…
弁慶の泣き所(すね)を狙って蹴られて…もんぞりうって倒れたところを…
一斉に殴りとばされた…
そのあとは…一方的に殴り蹴られて…どうすることも出来なかった…
「おまえ…いい女だな…(イヤな笑)」(唐島甲四郎)
「イヒヒ…(イヤな笑)」(坂田馬之助)
甲四郎と馬之助が…静江の存在を知り…
静江にいたずらをしようと…静江を押し倒した…
小太郎は…静江だけは守ろうと…
倒れこんだ静江の上に覆いかぶさって静江を守ったが…
甲四郎と馬之助に…徹底的に蹴られた…
小太郎たちが完全に伸びた頃…
浜にいた漁師などの村人たちが次々に集まってきていた…
もちろん…村人たちも唐島家の息子である甲四郎たちには手を出せない…
ただ黙ってみているだけだが…
それでも…甲四郎たちには…見えない圧力がかかっている…
「ちっ!」(甲四郎)
そこに…納品を終えた…「はまや才助」たちが戻って来た…
「はまや才助」は…甲四郎たちに頭を下げまわって…あやまり…
甲四郎にいくらかの銭を与えた…
銭を貰った甲四郎は…ニヤニヤしながら「いつ姫」に銭を見せ…
銭を見て機嫌が直ったいつ姫と共に…盛り場のある小田原の町へと消えていった…
「はまや才助」と共に…もどってきていた…
「風魔の小太郎」と「二曲輪猪助」は…
相手が「唐島家」の者だと知って…手を出さずに黙って立っていた…
主君がやられているのだというのに…顔色一つ変えずに…
それは…自分たちが忍者であると知られないためであった…
小太郎たちは…その日…
晩飯を浜辺で食べながら…黙ってしみじみと泣いた…
自分の力だけではどうにもならない…理不尽な屈辱を受けて…
天文13年(1544年)…
この夏で13歳になる…
小太郎…12歳の夏の日のことであった…
(つづく)