相模の小太郎 第2話 小太郎の初恋(後編) 【シーゲルの歴史小説】
相模の小太郎 -蒼き疾風外伝- 第2話 小太郎の初恋(後編) 【シーゲルの歴史小説】
※この物語はフィクションです。
↓↓
(前編からの続き)
「ふふふ…(笑)」(少女の笑い声)
小太郎と安本源三郎、鈴木甚兵衛の後ろから…
少女の笑い声が…聞こえた…。
ハっとなって…小太郎らが振り向くと…
そこには…
小太郎らの友人で、
親が「風魔党(北条家の忍び)」で下働きをして…
足柄にある「風間の里」に住んでいる…
少年忍びの「風間の矢五(ふうまの・やご)」と…
少女忍びの風間の市(ふうまの・いち)の…
二人の忍び(忍者)が立っていた…。
「フフフ…(笑)
源三郎は…女好きで…
ちょっとキレイな子を見ると…
すぐに…気持ちが傾いてしまうからなぁ…(笑)」(少女忍びの「風間の市」)
「………(黙ってニヤニヤしている)」(少年忍び「風間の矢五」)
「矢五と市」は…
兄弟のように育てられてたが…
少女忍びで妹の「市」は…捨て子で…
本当は…「義理の兄弟」の間柄であるが…
二人は本当の兄弟のように仲が良い…。
「市」は…この年頃の女の子らしく…
おしゃべりで…明るく元気な少女忍びであるが…
「矢五」は…
極端な無口で…いつもニヤニヤしているだけなのだが…
人懐こくて…人から好かれやすい少年忍びである…。
「なんだ…矢五と市か…(驚)」(小太郎)
「あ~もう~ビックリしたなぁ~!!(驚&怒)
いくら…忍びの修行中だからって…
突然、人の後ろに…忍びよるの…
ビックリするからヤメロよなぁ~!!(怒)」(安本源三郎)
「いい~のか~ワタシにそんなこと言って~(笑)
源三郎は…このワタシにも…
好きだ…キレイだ…カワイイぞ…って…
そ~言ってた時期もあったのになぁ…(苦笑)」(風間の市)
「オマエ…市にまで…そんなこと言っていたのか…??(怒)(鈴木甚兵衛)
「ああ~わかった!!わかった!!ゴメン!!ゴメン!!(慌&困)」(安本源三郎)
「ははは~(爆笑)」(一同)
「おお~い!!小太郎~!!(叫)」(はまや才助)
すると…今度は…
小田原で手広く商いを営む「はまや」の末息子…
「はまや才助」と…、
「はまや」の奉公人の娘「おゆり」…の二人が現れた…。
もちろんこの二人も…
小太郎らと同い年の少年少女で…
小太郎らと同い年の少年少女で…
小太郎らの友人である。
「どうだった??今日の漁は??(笑顔)」(はまや才助)
「どうよ!!今日も大漁よ!!」(安本源三郎)
「おお~!!さすがは…小太郎に源三郎~!!
いつもながら…大した~腕前だなぁ~!!(嬉)」(はまや才助)
「何言ってのよ~!!
小太郎さんのお陰でしょ~!!(笑)
甚兵衛さんは…
いつも通り…
ただ…そばにいただけで…(笑)
源三郎は…
水軍の水手(かこ:舟をこぐ人)で…
船を漕いで操るのは上手だけど…
漁に関しては…
小太郎さんの方が…断然上手だからねぇ~(笑)
小太郎さんのお陰でしょ~!!(笑)」(おゆり)
「ちぇっ!!(ふて腐れる)」(源三郎、甚兵衛)
「ははは~(笑)」(一同)
「おゆり」は…
漁師町の娘らしく…
ずけすけと言いたいことを素直に言って笑ってしまう性格なのだが…
町娘の売子らしい…明るく人懐こい笑顔で…そう言われると…
全然、嫌味に聞こえないから不思議だ…(笑)
実は…おゆりは…
小太郎のことを…ずっと…好いていて…
そのせいもあってか…
悪気はないのだが…
つい…いつも…
「小太郎びいき」なことを言ってしまうところがある…。
ちなみに…
「はまや才助」は…
「おゆり」のことを…好いているのだが…
「おゆり」は才助のことを…
まったくと言って相手にしていなかった…。
それから…
他にも…数人の小太郎の仲間の…少年少女たちがやって来て…
漁に出た小太郎の小船から…
魚の入った木箱を下ろしたり、魚の選別を行っている…
それらはみんな…
身寄りが無い孤児だったり、
小太郎らと同じ境遇の者ばかりの…
貧しい少年少女たちだった…。
小太郎たちは…
こうやって…皆で共同生活をしているのだった…。
「さあ~さあ~みんな~!!
早くしないと日が暮れちまう~!!
いつものように…魚を選別して…
良いところの半分は…才助の「はまや」さんに納品して…
残った半分は…開いて「一夜干し(干物)」してしまおう!!
そして…売り物にならない物は…
今夜のおかずにしよう~!!」(小太郎)
「あいよ~~!!!(喜)」(一同)
そうやって…小太郎たちが…
皆で楽しげに…それぞれの作業をしていると…
先ほどの…「加賀屋の娘」が…
柔らかく…優しげに…そっと微笑みながら…
小太郎たちの作業を…楽しそうに眺めているのだが…
その微笑む表情には…
やはりどこか…寂しげな雰囲気が漂っていた…。
小太郎は…その少女の表情を見て…
何やら…胸が締め付けられるような…切ない気持ちになっていた…。
「…………(胸が締め付けられる気持ち…)」(小太郎)
「(小声で)小太郎…ちょっと…」(少女忍びの「風間の市」)
「んん…??(ちょっと驚)」(小太郎)
「(小声で)あんなイイとこのお嬢さんに…
ホレるんじゃないよ…(笑)」(風間の市)
「えっ!!??
いや…あの…その…(驚&慌)」(小太郎)
「(小声で)小太郎が…女子を見て…
ぽかーんとした顔するなんて…(笑)
めったにあることじゃないからねぇ…バレバレだよ…(笑)
アンタが…あんなイイとこのお嬢さんに…ホレたって…
悲しく…辛い想いをするだけだって…
だから…あの子は…やめときな…(笑顔)
アンタには…
「おゆり」のような身分の者の方が…
お似合いだよ…(どこか…寂しげな笑顔)」(風間の市)
市は…小太郎らとは…
一つか二つ年下の女の子なのだが…
厳しい忍び修行のせいなのだろうか…??
その年下の「妹」のような…
可愛らしい見た目とは違い…
彼女の話す言葉は…
どこか…大人びていて…説得力があり…
「すべてお見通し」に感じるところがある…。
もちろん…普段は…年下の女の子らしい…
表情やしゃべり方をするのだが…
真剣な表情で言葉を話す時…
市が…ずっと年上の人間に思えるから不思議だ…。
「う…うん………(複雑)」(小太郎)
小太郎は…
そんな「市」の忠告だからと…
深く理解出来ないままながら…
想いを隠さず、素直にうなずいた…。
「そうか…小太郎の「初恋」か~(笑顔)
小太郎にとってみれば…
あの子は…「初恋の人」なのかも知れないなぁ…(哀)
好きになるな…って言われても…
言われて…止められるようなことじゃないのだろうけど…(哀)
アンタのために…言ってるんだからね…
うらまないでちょうだいよ…(笑顔)」(風間の市)
「うん…わかったよ…市…ありがとう…(笑顔)」(小太郎)
「うん…(急に女の子らしい笑顔と口調に変わる)」(市)
「そうか…
オレは…あの子に…ホレてしまっていたのか…(笑)
だから…こ~胸が苦しい…感じがするのか…??(驚)
正直…市に言われいるまで…自分では気が付かなかったよ…(笑)
そして…
これが…初恋ってものなのか…(恥&顔が赤くなる)」(小太郎)
「まぁ~人を好きになって…想うことは…
けっして悪いことじゃない…とは思うけど…(女の子らしい表情と口調で)
きっと…辛く…悲しい想いを…するだけだろうから…
あの子は辞めて…他の子にしなよ…(女の子らしい笑顔で)」(市)
「う…うん…(切ない)」(小太郎)
「もう~そんな切ない表情しないで~(女の子らしい笑顔と口調で)
もし…誰も…小太郎のこと…
相手にしてくれなかったら…
そん時は…ワタシが…
小太郎の恋人になってあげるからね…(女の子らしい表情と口調で)」(市)
「えっ!!(驚)」(小太郎)
「ふふふ…(女の子らしい笑顔と口調で)」(市)
(でも…あの子(加賀屋の娘)は…
とっても…寂しそうな…表情をしていたっけなぁ…(哀))(小太郎の心の中)
「ほら…また…
あの子のこと…考えてる…(苦笑)」(市)
「ははは…(苦笑)」(小太郎)
こうして…小太郎の「初恋」は…
12歳の春の陽気と…
夕陽で光り輝く…小田原の海と共に…
突然…小太郎の前に現れたのだった…。
天文13年(1544年)…
小太郎…12歳の春のことであった…。
つづく。