相模の小太郎 第12話 かけがえのないもの 【シーゲルの歴史小説】
相模の小太郎 -蒼き疾風外伝- 第12話 かけがえのないもの 【シーゲルの歴史小説】
※この物語はフィクションです。
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「小太郎…加賀屋の旦那様が…お呼びだぞ…」(はまや才助)
「えっ!?(驚)」(小太郎と小太郎の仲間たち)
「何だろう…??いったい…??(不安)」(鈴木甚兵衛)
「きっと…あれだよ…
ほら…この前…唐島甲四郎たちに…ひどい目にあわされただろ…
そんとき…加賀屋のお嬢様(静江)も…「いつ姫」に叩かれていたから…
そのことで呼ばれたんじゃないか…??(不安)」(安本源三郎)
「お糸(静江の侍女)だわ…
あの~おしゃべりめ~!!(怒)」(おゆり)
「だとしたら…小太郎…
「もう二度とウチの娘に近づくんじゃない!!」って感じで…
加賀屋の旦那に…こっぴどく叱られるぞ…(困)」(山本勘助)
「う…うん…(不安)」(小太郎)
浜中の小太郎こと…さがみの「小太郎」は…
不安を抱えて…静江の父である…「加賀屋六郎兵衛」に会いにいった…。
加賀屋で六郎兵衛の護衛役の長をしている「正五郎」が小太郎を案内して…
裏口から庭に回り…六郎兵衛のいる部屋に案内されると…
そこには…六郎兵衛と静江が待っていた…。
部屋の前には…静江の侍女「お糸」が頭を深々とさげて座っている…
「おお…小太郎…来たか…(威厳のある声)」(加賀屋六郎兵衛)
「は…はい…(緊張)」(小太郎)
小太郎は…庭先の地べたに座って土下座をし挨拶をしようとすると…
「ああ…そんなことは良いから…早く部屋に入りなさい…(威厳のある声)」(六郎兵衛)
「は…??(不思議)」(小太郎)
小太郎は…この前のことで…こっぴどく怒られるのだと思っていたので不思議に思った…
「さぁ~小太郎さん~中に~(笑顔)」(加賀屋静江)
「は…はぁ…??」(小太郎)
静江の笑顔を見て…少しだけ気持ちは楽になったが…
加賀屋の主「六郎兵衛」の前とあって…緊張して、恐る恐る…部屋に入った…
「小太郎…
わしはな…近い将来…この「静江」に…
この加賀屋を任せようと思っている…(威厳のある声)」(六郎兵衛)
「えっ!?(驚)」(小太郎)
「もちろん…今すぐにと言うわけではない…
当分の間は…わしの下で補佐として経験を積ませて…
その後に…静江を主にして…わしは後見役にまわるつもりじゃ…(威厳)」(六郎兵衛)
「は…はぁ…??」(小太郎)
「そこでじゃ…小太郎…
今まで小太郎や、小太郎の仲間には…
この加賀屋を色々と手伝ってもらっているが…
本格的に…この加賀屋を手伝ってはもえらないだろうか?(威厳)」(六郎兵衛)
「は…はぁ…??(驚)」(小太郎)
「まぁ~「加賀屋を手伝う」と言うよりは…
この「静江を手伝う」て…
静江の力になっては…貰えないだろうか?(威厳)」(六郎兵衛)
「は…はぁ…??(驚)」(小太郎)
小太郎は…六郎兵衛が何を言おうとしているのか良くわからなかった…
「もう存じているとは思うが…
わしらがこの小田原(支店)に来たのは…
本店のあった「加賀の国」で…合戦に巻きこまれ…
本店だけでなく…京や堺にある支店まで…全ての財産や使用人を無くし…
わしの妻や…後継者であった息子とその家族や…他の息子や娘たちを亡くし…
わしの子で…生き残ったのは…末の娘「静江」だけとなった…
そのため…この加賀屋の後継者は…
どこかの豪商か名家の「良き者(金持ち)」を選び…
静江の婿にして後を継がせて…
手っ取り早く加賀屋の再興させるつもりじゃったのだが…
この小田原に来て…
そちたちと仲良くしている「静江」を見て…
わしは…気が変わってしまったのだ…」(六郎兵衛)
「………??」(小太郎)
「加賀にいた頃の…強欲なわしじゃったら…
迷わず…「良き者(金持ち)」を静江の婿にして…
加賀屋の再興を…第一に考えていただろう…
しかし…今は違う…
合戦で全てを失って…
本当に大切で…かけがえのないものとは…何か?…
その答えがわかったからじゃ…」(六郎兵衛)
「………???」(小太郎)
「今の「静江」にとって…
その「かけがえのないもの」とは…
権威でもなければ…財産でもない…
それらを備えた…金持ちの「良き婿」でもない…」(六郎兵衛)
「………???」(小太郎)
「ふふふ…(笑)
今のそなたに…そのようなことを話しても…わかるまいわな…(笑)」(六郎兵衛)
「はぁ…??」(小太郎)
「どうじゃ…小太郎…
「静江」の力に…なってはくれまいか?(笑顔)」(六郎兵衛)
小太郎は…六郎兵衛が話している意味は…ほとんど理解出来なかったのだが…
母や兄弟、多くの使用人などの…「かけがえのないもの」を失い…
孤独で、深く心に傷を負った「静江」の…「力になってあげたい」という気持ちは…
他の誰にも負けないと…小太郎は思っていた…だから…
「わかりました…静江様のために…最善を尽くします…(笑顔)」(小太郎)
と…小太郎は笑顔で返事を返した…。
「そうか…では…頼んだぞ…(笑顔)」(六郎兵衛)
六郎兵衛は…小太郎のその言葉を聞いて…優しい笑顔で返答した…
小太郎は…六郎兵衛の…
心からの優しい「笑顔」を初めてみた気がした…
小太郎は…初老の六郎兵衛が…
加賀屋の主「六郎兵衛」としての笑顔をみせたので無く…
孫ほどに歳の離れた…末の娘の…行く末を案じる…
静江の「父親」としての…「六郎兵衛」の心から笑顔を見せたのだと思った…
ぼんやりとそんなことを考えながら…
皆の待つ浜にもどると…
小太郎に気付いた仲間が…すぐに近寄ってきた…
「小太郎…どうじゃった…??」(山本勘助)
「は…はぁ…??」(小太郎)
「おまえさん…加賀屋の旦那様に会ってきたんじゃないのかえ??」(山本勘助)
「いや…会って話しを聞いてきましたよ…」(小太郎)
「で?どんな話を…??」(鈴木甚兵衛)
「どんな話…??
さぁ…??
一人娘だからとか…力になって欲しいとか…
そんなようなこと…??」(小太郎)
「はぁ??」(みんな)
「話は聞いてきたけど…自分でも良くわかってないんだ…(苦笑)」(小太郎)
「はぁ???」(みんな)
「小太郎のヤツ…こっぴどく怒られた衝撃で…
頭が…もうろうと…してんじゃないのか…??」(安本源三郎)
「もしかして…小太郎さん…バカになったちゃったの??(涙)」(おゆり)
「ま…まさか~(驚)」(みんな)
小太郎は…その夜…
寝床に入って…六郎兵衛が言ったことを…良く思い返してみた…
「今の「静江」にとって…
その「かけがえのないもの」とは…
権威でもなければ…財産でもない…
それらを備えた…金持ちの「良き婿」でもない…」(六郎兵衛)
「 「かけがえのないもの」か…」(小太郎)
そんなことを考えていながら…
小太郎は…ゆっくりと…深い眠りについていった…
天文13年(1544年)…
この夏で13歳になる…
小太郎12歳の夏の日のことであった…
(つづく)