シーゲルの独り言☆パート2

こちらはパート2です~

相模の小太郎 第17話 漁師の目 【シーゲルの歴史小説】

相模の小太郎 -蒼き疾風外伝- 第17話 漁師の目 【シーゲルの歴史小説
 
 
 
※この物語はフィクションです。
 
 
 
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【この回のイメージ曲♪(その1)】
黄金の日日
http://www.youtube.com/watch?v=GN-ttLjTf9Y

 
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「 加賀屋静江」の商団と…
 「相模の小太郎」こと「浜中(はまなか)の小太郎」らの一行は…
 

最初の目的地である…山中(伊豆)の地に…
「加賀屋」の拠点となる「旅籠」の建設を始めた…
 
「旅籠」とは言っても…
加賀屋の商い拠点となる施設なので…
宿屋の他に、店舗や蔵、馬屋、工房などを備えた…
複合的な商業施設で大規模なものだった…


「加賀屋静江」は…
この旅籠の建設と同時に…
部下をこの拠点の周辺に派遣して…商いの販路をつくりはじめると…
建設のための作業員や、商談に訪れる商人や民人の出入りが多くなり…
街道沿いの道なりに…簡易的な青空市場や住居を建てる者も現れた…

「この山中の地に…小さな村が出来たようですなぁ…(驚き)」(浜中の小太郎)

「そうじゃなぁ…さすがは加賀屋のお嬢様じゃ…(感心)」(山本勘助

「この地だけの店舗では…まったく採算が合いませんが…
 この山中を拠点として、周辺から物産を集め…
 小田原の加賀屋本店まで販路を繋げれば…
 自然と…大きな商圏になり…十分採算が取れるようになるでしょうね…(笑顔)」(加賀屋静江)


「加賀屋静江」と「小太郎」たちは…
そう言って…旅籠の建設現場を眺め監督していたが…


「………!!!!!(何かに気付く)」(小太郎)


何かに気付いた小太郎が…
急に黙り込んで…一点を凝視し…ぴくりとも動かなくなってしまった…
まるで…仏像になったかのようだ…


「こ…小太郎さんは…どうしてしまったのでしょうか…??(心配)」(静江)

「ああ…小太郎の目が…「漁師の目」になってしまったようですなぁ…」(山本勘助

「漁師の目…??」(静江)

「まぁ…「漁師の勘」みたいなものですな…
 小太郎は…海に出ると…いつもあんな感じになります…
 黙って…静かに…海をじっと見つめて…一言も口をきかなくなり…
 潮の流れや…魚の群れなどを探して…
 わずかな「海の変化」を…全霊を澄まして感じ取っているんですよ…」(山本勘助

「何を感じ取っているんでしょうか…??」(静江)

「さぁ…そこまではわかりませんが…
 小太郎の「漁師の目(勘)」で…
 何か…わずかな「変化」を感じ取ったのでしょうなぁ…」(勘助)


「………(じっと観察している)」(小太郎)


しばらく黙り込んで観察を続けていた小太郎は…
旅籠の建設現場で働いている…
「一人の男」に目をつけた…

小太郎は…その男に近づいて…
少し離れたところから…じっと観察している…


「その男」は…
これといって特徴のない…どこにでもいるような普通の男だった…


「勘助さん…あの方に…見覚えはありますか…??(疑問)」(静江)

「さぁ…特に記憶に無いですね…(疑問)」(勘助)

「静江」は小太郎の仲間にも…
「その男」に見覚えが無いか…聞いてまわったが…
皆、「記憶に無い…」と言った…


小太郎に…じっと見つめられている…「その男」は…
小太郎に見つめられ続けていることを気持ち悪がって…

「あの…わたくしめに何か…??(不安)」(その男)

と…静江や勘助などに…小太郎のことをたずねてみたりしたが…
小太郎がなぜ見つめているのか…誰もわからなかった…


「………(不安)」(その男)

その男は…不安そうな顔して…
作業を続けている…

どこか重苦しい雰囲気と…緊張感が漂う…
時がしばらく流れると…


「!!!!!(何かに気付いた)」(小太郎)

何かに気付いた小太郎が…
ゆっくりと動き出し…
「その男」に近づいて…笑顔で声をかけた…


「小太郎さん…小太郎さんですよね…(笑顔)」(小太郎)

「は?…私は「小太郎」という名ではありませんが…??(不思議そうな顔で)」(その男)


「いえ…小田原の海でお見かけした…小太郎さんですよね…(笑顔)」(小太郎)

「小田原…??
 私は…小田原には一度も行ったことはありません…
 駿河・三嶋の生まれの…「小平太」と申すものですが…??(不思議そうな顔で)」(その男)


「そうですか…(笑顔)」(小太郎)


そう言って…小太郎は…いったん引き下がった…

その話を横で聞いていた…静江は…

「小田原の「小太郎」??
 私は見覚えがありませんが…
 小田原に「(浜中の)小太郎さん」以外に…
 小太郎という方はいらっしゃいましたでしょうか…??(不思議そうな顔で)」(静江)

と…勘助たちに…そう尋ねたが…

「さぁ…??(不思議そうな顔で)」(勘助たち)

といって…誰もも「その男」を見知った者はいなかった…


「なんか…キツネにつままれたような話ですね…(不思議そうな顔で)」(静江)

「ええ…でも…小太郎だけには…解るようです…
 小太郎は…「漁師の目(勘)」は…一流ですから…(不思議そうな顔で)」(勘助)

「………(不思議そうに)」(静江)



結局…その日は…「その男」が誰なのかは…最後までわからなかった…

翌日になって…旅籠の建設現場に…静江や小太郎らが現れると…
「その男」の姿は…無かった…

「「小平太」という者は…どうしたのです…??
 誰か「その男」の行方は知りませんか…??(緊張)」(静江)

静江が作業員たちに「その男」の行方を尋ねると…

「小平太…??
 さて…そんな名前の者が…いましたかね…??(不思議そうに)」(作業員その1)

「昨日、小太郎に見張られていた「あの男」じゃよ!!」(勘助)


「ああ…そういえば…「あの男」…
 名は…何と…言うたかな…??」(作業員その1)


「たしか…「一郎太」と…言っていたような…??」(作業員その2)

「いや…「小次郎」と…言うていたぞ…??」(作業員その3)

「ちがう…ちがう…たしか「太郎次」と言う名じゃよ…??」(作業員その4)

「ワシは…一乃助と聞いたぞ…??」(作業員その5)


けっきょく…誰も「その男」のはっきりとしたことは…
誰一人解らなかったし…
何一つ正しいことは解らなかった…

「その男」…顔や特徴までも…誰一人、はっきりと思い出せない…

まるで「キツネにつままれた」ような不思議な話だったが…

小太郎だけは…はっきりと覚えているようだったが…
皆が混乱して…気持ち悪がっているので…
小太郎は…もう「その男」のことを…一言も口にしなくなった…


そして…数日後…
「旅籠」の一部施設が完成し…
加賀屋の山中の拠点として…仮運営出来るようになったため…

静江と小太郎らの一行は…
山中の拠点を後にして…旅を再開することが決まった…

山中滞在の今日がその最終日ということで…
静江や小太郎たちは…その準備などに追われていた…


「小太郎様…」(旅商人)

と言って…ある旅商人が商談に現れた…
 

これといって特徴のない…
普通の「旅商人」と言った風体の男が…
小太郎に挨拶をして商談に現れた…


「!!!!!(驚き)」(小太郎)


「さすがは…小太郎様…
 旅商人の姿になっても…
 本当のワタシのことがわかるのですか?(どこか冷たい笑顔)」(旅商人)


「小田原の小太郎さんですね…
 新九郎様の付き人の…(緊張)」(小太郎)


「「漁師の目(勘)ですか…さすがです…(苦笑)
 ワタシの本当の姿がわかるのは…
 ワタシの同じ家業の者でも…誰一人わかる者はおらぬでしょう…(どこか冷たい笑顔)」(旅商人)

「あなたは…新九郎様に仕える…
 忍び(忍者)の者なのですね………(緊張)」(小太郎)


その男の正体は…
小田原で出会った…新九郎の側近で…
もう一人の小太郎…

北条氏康に仕える…
風魔党の頭領…
「風魔の小太郎」だった…

もちろん…小太郎は…
「新九郎」が「北条氏康」であることや…
「小太郎」が「風魔の小太郎」であることを…
そこまで詳しくは知らない…


※ 相模の小太郎 第8話 三人の男 【シーゲルの歴史小説



「本当なら…ワタシの正体(忍者)を知った者は…
 生かしちゃおけない掟なのですが…
 小太郎さんは…我が主「新九郎」様(北条氏康)とも親しい間柄ですので…
 今はアナタを始末することは出来ません…

 それに…こんな素晴らしい目(勘)をお持ちなら…
 殺してしまってはもったいない…

 どうです?我ら同志となって働いてみる気ありませんか?」(旅商人こと「風魔の小太郎」)



「いえ…私は…
 このままお嬢様(加賀屋静江)をお助けしながら…
 商人か漁師を続けるつもりです…(緊張)」(浜中の小太郎)

「どうしても?」(風魔の小太郎)

「は…はい…(緊張)」(浜中の小太郎)


「ふっ…仕方無いな…
 じゃ~ワタシのことは…他言無用でお願い致します…

 もしも誰かにしゃべったら…
 アナタの命は無いと思って下さい…

 アナタのことをお助けしながら…アナタのことをを監視する…
 我が手の者を…アナタにつけておきますので…
 どうぞ…ご油断なきように…わかりましたか?(冷たい笑顔)」(風魔の小太郎)


「わ…わかりました…(緊張)」(浜中の小太郎)

「良し…(冷たい笑顔)」(風魔の小太郎)


「ふぅ…(安堵のため息)」(浜中の小太郎)

その言葉を聞いて…(浜中の)小太郎が…緊張がとけ…
「安堵のため息」をつくと…

次の瞬間…風魔の小太郎は…姿が消えていた…


「………(怖)」(浜中の小太郎)




(つづく)