相模の小太郎 第3話 春の夜… 【シーゲルの歴史小説】
相模の小太郎 -蒼き疾風外伝- 第3話 春の夜… 【シーゲルの歴史小説】
※この物語はフィクションです。
↓↓
「加賀屋のお嬢様は…
今日も…あの場所に立って…海を眺めていらっしゃる…(切ない)」(武家の子:鈴木甚兵衛)
「どーして…加賀屋のお嬢様は…
いつも…あーやって…
寂しそうな顔をしながら…海を眺めているんだろう??(切ない)」(水軍の子:安本源三郎)
「うん…(切ない)
いったい…どうして…
いつもあんなに…寂しそうな顔をしているだろうね…??(切ない)」(漁師の子:浜中の小太郎)
小太郎たち3人が…海に漁に出て…
日が落ち始める…夕刻前に戻ってくると…
加賀屋の娘「静江」は…
いつもこうして…夕暮れ時の海を眺めている…
その表情は…とても寂しげで…
いつも…小太郎たちの胸を打つ…。
浜辺には…
小太郎たちの仲間の子供たちが…待っていて…
漁から帰った小太郎たちの小船を浜に上げ…
獲ってきた魚を船から降ろした…。
船から降ろした魚は…
良い魚だけを選別して、
半分は「はまや(才助の父が経営する店)」に卸すための木箱に詰め、
残り半分は…一夜干しを作るためにその場で魚を開く…
売り物にならない魚は…
今晩のおかずにするため…下ごしらえをする…。
そのようないつもの作業を…
小太郎ら…子供たちが…
キャッキャとはしゃぎながら…楽しげに作業を行っていると…
加賀屋の娘「静江」が…
切なく…寂しげな表情をしながら…
なんとも言えない…
優しげな…微笑みを…
小太郎らに向けて浮かべている…。
「………(切ない)」(小太郎)
「なぁ…小太郎…??
加賀屋のお嬢様は…
もしかして…オレたちの仲間に入りたいのかなぁ…??(切ない)」(安本源三郎)
「うん…たしかに…そんなような気もするね…(切ない)」(浜中の小太郎)
「アタシが行って…声をかけてみようか…??(笑顔)」(はまやの奉公人:おゆり)
「えっ??(驚)
おゆり!!やめとけ!!(驚)」(鈴木甚兵衛、はまや才助)
「どーしてよ!!(怒)
あの子が…いつも一人で寂しそうにしているのに…
何で声かけちゃいけないのよ!?(怒)」(おゆり)
「もちろん!オレだって…そう思うよ…
だけど…オレたちなんかが…自分から…
加賀屋のお嬢様に…近づいて…声をかけたりしたら…
あとで…加賀屋の者に…
何を言われるか…わかったもんじゃないぜ…(心配)」(鈴木甚兵衛)
「そうだよ!!
おゆり…やめろ…やめてくれ…(困)
おゆりだって…解っているだろけど…
ウチの店…「はまや」は…
「加賀屋」さんの配下の下請けの店で、
「加賀屋」さんの御用聞きみたいなもんだから…
お嬢様に親しく声を掛けたなんて…
加賀屋のもんに知られて…
加賀屋の旦那様に…ご機嫌を損ねられたら…
ヘタすれば…
ウチの店は…加賀屋さんとの取引は無くなるかも知れないぜ…??(困)
それに…
小太郎が獲った魚も…
ウチで買い取れなくなるかも知れないんだぜ…??(困)」(はまやの末息子:はまや才助)
「あら??(怒)
そんなことくらいで…取引が無くなるなんて…??(怒)
加賀屋さんも旦那様(はまやの)も…
そんな…心の狭いお方じゃないでしょう…??(怒)」(おゆり)
「そ…そうかも知れないけどさぁ…(焦&困)」(はまや才助)
「何よ!!意気地ナシ!!(怒)」(おゆり)
「い…意気地ナシ…??(怒)」(はまや才助)
「そうよ!!
才助も…甚兵衛も…源三郎も…
ここにいる男は…
みんな~意気地ナシの…ダメ男ばっかり!!(怒)」(おゆり)
「ダメ男~!!??(怒)」(才助、甚兵衛、源三郎)
「おゆり!!
それはちょっと言いすぎじゃないか!?(怒)」(源三郎)
「何よ!!やるっていうの!!(怒)」(おゆり)
「まぁ~まぁ~(困)」(小太郎)
小太郎たちが…
加賀屋の娘「静江」に関することで…
騒がしく…言い争っているとも知らずに…
「静江」は…
そんな小太郎たちを…眺めながら…
クスクスと楽しそうな笑顔を見せている…。
「見ろよ…(喜)
加賀屋のお嬢様が…
こっちを見て…楽しそうに笑っているぜ…(喜)」(源三郎)
「ほんとだ…(喜)」(小太郎)
「おゆり…
女のオマエが…
数人の男相手に…ケンカを売るほど…威勢が良いもんだから…
それが…可笑しくて…笑っているんだろうぜ…(笑)」(甚兵衛)
「えっ??(驚)
あら…ヤダ…(恥&赤くなる)」(おゆり)
おゆりは…
恥ずかしそうに顔を赤らめながら…
加賀屋の娘「静江」に向かって…
2・3度、丁寧に女性らしくお辞儀をすると…
小走りで駆けていって…
小太郎の背中に隠れてしまった…。
「はははは~(笑)」(小太郎たち)
その光景を見て…加賀屋の娘「静江」は…
もう一度、楽しそうにクスクスと笑っていた…。
少したって…
「静江」の少し後ろに控えていた侍女が…
何やら声をかけると…
もう帰宅の刻限なのであろうか…
静江は…名残惜しそうな表情を見せながら…帰って行った…。
「ああ…行っちゃった…(寂)」(源三郎)
「でも…お嬢様が…笑ってたね…(嬉)」(おゆり)
「うん…あんなお嬢様の顔は…初めて見たよ…(嬉)」(小太郎)
「ん??(女の直感)
もしかして…小太郎さんは…
あのお嬢様に…ホレちゃったの…??(驚&ショック)」(おゆり)
「えっ??(驚)
いや…別に…そーいうわけじゃ…(焦&困)」(小太郎)
「………(怪しむ目)」(おゆり)
「そ…それより…作業!作業~!!
早くしないと…日が暮れちゃうぞ~!!」(小太郎)
「あいよ~!!」(一同)
小太郎たちは…その後…
獲った魚をぶつ切りにして…野菜と煮込んで…
味噌で味付けした「漁師汁」を作り…
夕陽を浴びて黄金色に輝く…小田原の海を見ながら…
皆で…楽しく…早めの夕食をとった…。
今日の小太郎は…
加賀屋の娘「静江」の…笑顔が見れたことで…
何とも言えないような…幸福感を感じている…。
幸福感を感じると同時に…
胸を締め付けるような…
初恋の切なさも…感じている…。
そして…
前に…風間の市(少女の忍び)に…
言われたことを思い出している…
「アンタが…あんなイイとこのお嬢さんに…ホレたって…
悲しく…辛い想いをするだけだって…
だから…あの子は…やめときな…」(風間の市)
(やはり…
オレと…加賀屋のお嬢様は…
身分が釣り合わない…(切ない)
そんな人を好きになったって…
自分が…辛く…切ない想いをするだけだ…
そうだと…
わかってはいる…
わかってはいるんだけど…
頭と…心は…違うんだよなぁ…(困)
これが…本当の恋ってヤツで…
初恋ってヤツなんだろうなぁ…(切ない))(小太郎の心の中)
その夜…小太郎は…
春の夜の…海からの風が…心地よい夜だと言うのに…
少し興奮して…なかなか寝付けなかった…。
天文13年(1544年)…
小太郎…12歳の春(初恋)の夜…のことであった…。
(つづく)